波乱万丈の通販人生 -その20-


ラジオショッピングの生放送中に、アナウンサーに飲んでもらう事を日本で初めて定着させ半年間で6万人のお客様を集客した私達は、一番売れる時期(6月)を迎えこれからどんな展開になっていくのか、ワクワクしながらすっかり有頂天になっていました。
そんな中大手ビールメーカーの社長さんが会社見学に来たいとアポが入りました。直感的に辞めた方がいいと思った私でしたが、社長はすっかり乗り気です。いち田舎の酒屋さんに、3大大手の1社の、それも社長が、訪問する等あり得ない話です。H社社長は大喜びで出迎え、通販のノウハウを自信満々に話されました。
その日から2週間と経たない、その運命の日は、ある日突然訪れました。私達が販売している100円の発泡酒は別名ではありますが大手メーカーが138円~180円位で販売していました。H社で社長と一緒に居た私は、社員が発したその言葉に頭をハンマーでなぐられたような衝撃を受けました。
「サッポロ、アサヒ、キリン3社が今日から一斉に発泡酒を98円で販売するそうです」頭の中が真白になるとはこの事です。3大メーカーに価格の競争を仕掛けられてかなうはずがありません。
私の頭の中は、集まった6万人のお客様はどうしよう。こちらに向かって船に乗って来つつある何万ケースもの発泡酒はどうしよう。予約を取ってしまった広告はどうしよう。20人も揃えてしまったオペレーターはどうしようどうしよう、どうしようがぐるぐるうず巻いていました。
案の定、ラジオショッピングを流しても、会員様に電話を掛けても全く売れません。天国と地獄とはこの事です。3大大手メーカーがいち酒屋さん等相手にすることはないと思います。でも私達は余りにも無謀な事をやったのかもしれません。その時は何を反省すれば良いのかさえ解りませんでした。私にとっても人生最大のピンチでした。
何の策もないままH社を後にした私は、その夜一睡もせずとんでもない商品を思いつきました。H社社長が「会社は終わりだ」と覚悟されたその窮地を脱する事に導いたその新商品のお話しは次回に…
最近、社屋の裏の梨の木に小さなつぼみがふくらんでいます。少しずつ大きくなるのを見るのが、毎日に楽しみになっています。