私が小学校の時のことです。A子ちゃんという同級生の同じ部落（この頃はまだそう呼んでいました）の子がいました。
私は体格もよく（今もですが）、運動もそこそこ出来る、結構強い方だったと思います。A子ちゃんは、体も小さく運動オンチ、超がつく程おとなしい子でした。
ある日の放課後近道を帰っていると、前をA子ちゃんがトボトボ歩いていました。人一人が歩けるあぜ道です。
私は追いついて声を掛け、「ちょっとここに立って」と立ち止まらせ、くつの回りに近くの田んぼからワラを持ってきてぐるぐると巻きつけました。そして、「ここから一歩も動かんでよ。ずーっとだけんね。」と言い残して帰りました。
夜ふとんに入って寝る時になってその事を思い出しました。もしかしたらA子ちゃんは、あのまま立っているかもしれないと、その時怖くてたまらなくなった事をはっきり覚えています。翌朝A子ちゃんは普通に学校に来ていて私と目が合うと、下を向きました。ホッとした反面、何故か「なぁんだ」と思いました。あれは、確かないじめでした。
たった１回でしたが、今でも鮮明に覚えているのです。「もうしないよ」と言おう。「ごめんね」と言おう。しばらく繰り返しそう思っていましたが、とうとう卒業するまで言わないままで、それ以降A子ちゃんとは会っていません。今もこの事を覚えていて切ないのは、謝る事ができなかったからです。
岩手県の中学２年生の男の子がいじめを苦にして自殺してしまいました。学校はいつも煮え切らない返事を繰り返し、証拠が出て来ないと認めません。私は、A子ちゃんに自分がやってしまった事にいつも重なり、学校にはいじめはある、という前提で何故物事をとらえないのだろうと思います。
問題になるのが怖くて隠したり、見ないふりをしたりしなくて良いと思います。一番大切なのは、自分達の体裁ではなくて子供達の日常だと思うのです。
頭を下げている校長先生も教育委員会もそんな事している間に、いじめは「あるぞ、あるぞ」という目で見て欲しい。「無ければ良いな」ではない目で、探してほしいといつも思います。
人を傷つけたり、自分が嬉しいと思った時、「ごめんなさい」や「ありがとう」を、その場ですぐ言わなければ、時間が過ぎるほどに言いにくくなる事をA子ちゃんに教えてもらいました。A子ちゃんは、早くに亡くなってしまいましたので、もう言う事も出来ません。A子ちゃんはあの日の事をずっと忘れなかったろうし、私も忘れることは出来ません。いじめとはそういうものなのです。
今日は、暗い話になってしまいました。台風が２つ日本に向かってきています。以前は九州を直撃しない様に祈っていましたが、今では沖縄から東北まで、どこに行っても心配です。
毎日熱中症の話題が絶えません。十分な水分と涼をとり、お体ご自愛ください。
