奪われた優勝

熊本県の朝礼コンクール終了から社内の朝礼コンクール迄の一ヶ月間、社内には異様な空気が漂っていました。チーム本部を含めた12チームが朝、昼休み、夕方と場所を捜しては手の内を見せない様に練習をしているのです。
こっそり他チームを偵察する人も見られる程でした。リーダーの中には鬼気迫る程の形相の人も居ます。どこも優勝を狙って必死に練習を重ねて来ました。

 さて、いよいよ当日、予定の時間になり電話も全て留守電に切り替え、コンクールがスタートしました。私を含めた『チーム本部』5名が1組目で登場。こちらは審査対象から外されていますので、気は楽ですが皆がリラックスして参加できる様、笑いを取る事を第一に内容を考えました。

 1チーム持ち時間7分、約1時間半で全チームの発表が終了。今回は1ヶ月前に会社見学に来られたK社も飛び入りで参加されました。
社員全員大嶌屋のチームが優勝を勝ち取る事を信じて疑わず、それどころかベスト3も間違えなく大嶌屋になるだろうと予想していました。ところが、終わってみればK社が1位。会場は発表と同時に大きなため息がもれK社の黄色い歓声だけが響き渡りました。拍手に変わる迄には相当な時間がかかったように感じました。

 たった1ヶ月前に初めて朝礼を始めた会社が何故大嶌屋を打ち負かす事になったのだろう???それも大量得点差をつけて……。私は考えました、大嶌屋の全チームももちろん優勝を狙っていました。しかし、K社は無欲で掛かって来ていたのです。見ていて鳥肌が立った時、私は負けたかもしれないとまさかの気持ちでいっぱいになりました。K社さんおめでとうございます。『参りました』の一言です。私達にもまた新しい目標が出来ました。無欲の強さを教えてくれてありがとうございました。